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インフルエンザ対策 インフルエンザ予防 ニュース
あなたは打つ?打たない? 新型インフルワクチン 副作用の懸念も
2009年10月18日(日) |
新型インフルエンザに対する国産ワクチンの接種回数について、1回でも効果的な免疫反応が期待できることが明らかとなり、厚生労働省は2回接種が前提の従来方針を1回接種に変更する見通しだ。そのため、医療従事者や持病のある人など5400万人の優先接種対象者以外にもワクチンが割り当てられる可能性が出てきた。“待望”のワクチンだが、実際は接種を希望しない人も少なくない。予防への信頼性やウイルスが弱毒性であること、副作用への懸念、費用などが主な理由だ。接種のチャンスが回ってきたら、あなたはワクチン打ちますか-。 出荷された新型インフルエンザワクチン ●効かない? 「高校を卒業してから風邪ひとつひいたことがない。体力には自信があるし、わざわざお金を払ってまでワクチンを打つつもりはありません。そもそもインフルのワクチンってあまり効かないと聞いたこともある」 埼玉県吉川市の会社員、田代幸男さん(30)はこう語る。これまでに、季節性インフル用のワクチンも接種した経験がないという。 田代さんのように、ワクチンの効果に疑問を持つ人は少なくない。ワクチン接種をしても、発症する人が少なくないからだ。 新型インフル用ワクチンの接種を希望する人は52・3%-。マーケティングリサーチ「インテージ」(東京)が、実施した調査(約10万6千人回答)では接種を希望する人が約半数に留まるという意外な結果が出た。 接種を希望しない人の理由では、「受けてもかからないとはかぎらない」(45・3%)という意見が最多だった。 ワクチンはウイルス感染を防ぐものと誤解されがちだが、あくまでも感染後の発熱や重症化を防ぐものでしかない。ウイルスは人に感染すると体内で増殖し、発熱などの症状を引き起こす。この際、ウイルスの増殖を抑えるのが、人がもともと持っている免疫力だ。ワクチンはこの免疫力を高める効果があるだけで、感染を防ぐ効果はないのだ。 効果も年代によって異なる。厚労省によると、季節性インフルでは健康な若者であれば約80%の確率で発熱などの症状を抑えられる。しかし、免疫の上がりにくい小児は20~30%、高齢者も34~55%といわれている。 ●費用が高い? 厚労省が今回の新型インフルで用意しているワクチンは当初、全員が2回接種する計算で国産分が2700万人分、輸入分が4950万人分の計7650万人分だった。 しかし、厚労省が国産ワクチンの効果について調べた結果、1回でも免疫反応が得られることが判明。1歳から13歳未満の小児以外は基本的に1回接種となる見通しで、正式決定すれば国産分は2700万人分から約4000万人分に増える計算となる。輸入ワクチンの接種回数についても今後、検討する。 接種費用は1回目が3600円。2回目は診察料などが不要となるため2550円で、2回接種すると計6150円となる。この額を「高い」として接種を躊躇(ちゅうちょ)する意見もある。 東京都府中市の大学生、中村圭さん(20)は「学生にはちょっと手が出ない。大学の友達でも2、3人がかかっているけどみんな3日程度で治っている。そのくらいならお金を払ってまで打とうとは思わない」と接種には消極的だ。 一方で、金額の問題ではないという声もある。 2歳の息子を持つ東京都練馬区の会社員、成田哲彦さん(33)は「子供は優先対象だから打てる時期が来たらすぐに打たせます」と話す。「ワクチン代が安いとは思わないけど、万が一のことを考えたらワクチンが1万円でも5万円でも打たせないわけにはいかない。実際に亡くなっている人もいるし、命の問題は金額では語れない」とキッパリ。 千葉県浦安市の主婦、藤沢のぞ美さん(27)は妊娠5カ月の妊婦。これまで季節性のワクチンは打ってこなかったというが、「普段なら打たなかったと思うけど、妊婦は危険といわれているし、心配なので受けようと思います」 ワクチンの値段については、世界保健機関(WHO)が1回分の価格を、高収入の国で10~20ドル(約900~1800円)、中程度の収入の国でその半分、低収入の国でさらにその半分になるとの見通しを示しており、日本は世界の中では高めの設定といえる。 ただ、季節性のワクチンは平均で1回3千円程度といわれており、今回の新型の価格について「妥当だ」という専門家は多く、従来の値段と比べても決して高いわけではなさそうだ。 ●専門家の意見は? ワクチン接種について、一般の意見は分かれるが、専門家や現場の医師はどのように考えているのか-。 吉祥院こども診療所(京都市)の今井博之所長は「当然打つ方がいい。私自身も打つし子供にも打たせる」と話す。新型インフルに感染した4歳の女児が、発熱の翌日に肺炎で呼吸困難に陥ったケースを目の当たりにした。 女児はタミフル投与で快方に向かったが、「季節性では発熱から肺炎を発症するまで4、5日かかるのに、新型は1、2日で肺炎を発症した。近くにある別の診療所でも同様の例は聞いており、弱毒性といわれているが、重症化率は高いのではないか」という実感がある。 けいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫・小児科部長も「新型インフルが季節性並みという誤解があるが、大きな間違い。タミフルなどの抗ウイルス薬が十分にある日本では死者の報告は少ないが、他の国では多くの死者が出て大変な事態になっている」とワクチン接種を強く推奨する。 一方で、ワクチンには副作用に対する懸念も残る。厚労省によると、季節性ワクチンでは注射個所が赤く腫れるなど、軽微な副作用が約1割の人に出る。こうした症状は数日で完治するため心配はないが、ワクチン接種後に高熱やアレルギーショックの症状が出るなど、因果関係が不明なケースも含めると毎年100例程度の副作用報告が寄せられ、数人の死亡例も確認されている。 昨年度も121人の副作用報告があり、うち2人が死亡、5人が筋肉に力が入らなくなるギラン・バレー症候群などの後遺症が出ており、ワクチンとの因果関係が否定できないケースもあった。 特に今回は輸入ワクチンも使われるため、輸入分について安全性を懸念する専門家は多い。製法が異なる上、国産には使われていない免疫力を補助する添加物が加えられているからだ。添加物によって高い免疫効果が期待される一方、副作用も出やすいといわれている。本来ならば臨床試験などで十分に安全性を確認した上で輸入されるが、それだと流行に間に合わない。そこで厚労省は手続きを簡略化できる薬事法の「特例承認」を初適用して緊急輸入する方針だ。 各自治体では10月中に、ワクチン接種の予約を受け付ける医療機関のリストを公表する。予約する際、国産分か輸入分かのいずれかのワクチンの接種を希望できるが、安全性の面から国産分が先に消費されるとみられる。 国立公衆衛生医院(現国立保険医療科学院)感染症室長をつとめた母里啓子さんは「インフルエンザは自然に治る病気だから、どんな副作用が出るか分からないワクチンは基本的に必要ない。普段から栄養のあるものを食べ、ゆっくり休んで免疫力を高めることだ」と生活習慣の改善こそ大事だと訴える。 菅谷部長も「輸入品を使うのは安全性を確認してからにすべきだ。タミフルやリレンザは効いており、無理をしてまで打つ必要はない」と話す。 国立感染症研究所感染症情報センターの岡部信彦センター長は「インフルエンザのワクチンは万能ではないし、わずかだが副作用もある。当然、打ちたくない人も出てくるだろう。専門家としてはチャンスがあるなら打った方がよいと勧めるが、強制するものでもない。リスクと効果を知った上で判断してほしい」と話している。 |