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インフルエンザ対策 インフルエンザ予防 ニュース
原田武夫:“新型インフル”に隠れる新たな疫病の予兆?
2009年09月17日(木) |
IISIAが読み解くマーケットと国内外情勢 15日(米国東部時間)、米国食品医薬品局(FDA)が製薬大手4社の製造した新型インフルエンザワクチンを認可した。1980年代後半、FDAが新薬を認可するまでに要した時間が平均約30カ月と言われていたことに鑑みると、最近の新薬認可時間は少しずつ短縮化傾向にはあった。それにしても今回のワクチン認可は異例の早さである。 今回認可を受けた製薬会社4社は、オーストラリアの血液・ワクチン製剤開発会社・CSL Ltd、フランスのサノフィ・アべンティスSA、英国のアストラゼネカPlc、スイスのノヴァルティスAGである。蓋をあけてみて驚いたのは、インフルエンザワクチンの製造ではかなり知られているはずの英国製薬大手であるグラクソ・スミスクラインの名前がなかったことである。グラクソ・スミスクラインは、言わずと知れた抗インフルエンザ薬・リレンザの販売で名前が知られている製薬メーカーであるが、今回の認可では同社のワクチンには「アジュバント」と呼ばれる免疫増強剤が入っている点が不適格とされたとの情報がある。 このアジュバントとは、薬物の働きを強めることを目的として加えられる試薬のことだが、日本で製造されたワクチンには入っていないものだ。アジュバントには様々な作用があるのにもかかわらず、実際にはその多くが未解明のままであるという見込みがある。グラクソ・スミスクラインは現在、アジュバントを加えていない新型インフルエンザワクチンをFDAに申請中であるが、これについてはまだ認可が下りていない。ところが不思議なことに、認可が下りていない同社と米国政府はすでに契約を結んでいるのだ。この点で、如何に今回の新型インフルエンザワクチンが急きょ作られたものであるか、想像に余りあるというものだ。そして安全性に対する治験においておや、である。 このように、天下晴れて堂々と販売可能になった“急造”の新型インフルエンザワクチンは、米国において10月初旬にも最初の接種が行われる。これらのワクチンを輸入して、治験もそこそこに接種を開始するべきだと考えている日本政府の対応にも不安が残るというのが専門家の見方である点を想起しておきたい。 各国で着々と進む新型インフルエンザワクチン接種の裏側で現在、日本だけでなく複数の国で感染が広がっている病原性大腸菌O-157による食中毒被害は意外にも報じられていない。O-157は病原性大腸菌の一種で、ベロ毒素と呼ばれる毒素を放出し溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症(けいれんや意識障害)を引き起こす代表的な細菌だ。日本でも1996年に大阪府堺市で起きた、学校給食による児童の集団感染例を覚えておられる方も多いだろう。 現在日本で広がっているO-157による食中毒被害は、飲食チェーン店で成型肉を食べた人たちに集中している。これに対し英国では、動物の飼育されている農場で子供たちが動物に触れたり一緒に遊んだりしたことをきっかけに、O-157の被害が広まっているというのである。他方、米国ではクッキーの煉り粉や日本と同様に加工肉を食べた人たちの間でO-157の感染被害が出ており、すでに訴訟すら起きている。これがきっかけなのだろうか、O-157といった食品病原体を検出するキットを製造販売している米国企業が、このキットの海外における販売網を拡大する販売契約をある企業と結んだ。その企業こそ米国の化学メーカーで世界でも最大規模を誇るデュポンなのである。つまりO-157のような病原性大腸菌の被害が世界で拡大すればするほど、キットの販売量は増えてデュポンの利益があがるという仕組みである。 新型インフルエンザの陰に隠れてその脅威があまり注目されていない病原性大腸菌O-157の被害であるが、何もマーケットに混乱をもたらす要因は新型インフルエンザだけではないのだ。世界同時多発的に広がっているO-157被害。日本だけでなく欧米諸外国におけるO-157の被害が収束するのか、はたまた拡大していくのか、今後とも“潮目”の予兆に注視が必要である。 |